退職金の相場と税金【2026年版】手取り額を増やすコツ
公開日: 2026-04-27
退職を控えた多くの方が気になるのが「退職金はいくら手取りで残るのか」という問題です。退職金は給料とは別ルールで税金が計算されるため、同じ金額でもボーナスより手取りが多くなる仕組みになっています。逆に、もらい方を間違えると数十万円単位で損をすることもあります。
本記事では2026年時点の最新ルールに基づき、退職金の相場、退職所得控除の仕組み、税額の具体的な計算方法、一時金と年金のどちらで受け取るべきかまでを徹底解説します。退職予定の方はもちろん、まだ先という方も、知っておくと将来の選択肢が大きく広がります。
退職金の相場
まず気になるのが「みんないくらもらっているのか」という相場感。厚生労働省の調査によると、大卒・定年退職の場合の平均退職金は大企業で約2,200万円、中小企業で約1,100万円程度です。勤続年数や役職、企業規模によって大きく差が出ます。
| 勤続年数 | 大企業(大卒・管理職) | 中小企業(大卒) |
|---|---|---|
| 10年 | 約310万円 | 約120万円 |
| 20年 | 約950万円 | 約460万円 |
| 30年 | 約1,750万円 | 約880万円 |
| 定年(38年) | 約2,200万円 | 約1,100万円 |
注意したいのは、そもそも退職金制度がない会社が約2割存在すること。とくに従業員30人未満の小規模事業所では制度のない企業が多く、就業規則を確認しないと「定年で初めて知ってショックを受ける」ケースも珍しくありません。30代・40代のうちに必ず確認しておきましょう。
退職所得控除とは
退職金に対する税金は、「退職所得控除」という大きな非課税枠を引いた残りに対してのみ課税されます。これは長年の勤務に対するねぎらいとして設けられた、非常に手厚い優遇制度です。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
たとえば勤続38年なら控除額は 800万 + 70万 × 18 = 2,060万円。退職金が2,000万円ならまるごと非課税、2,200万円でも課税対象になるのは差額の140万円だけです。さらに後述する1/2課税のおかげで実際の税負担はごくわずかになります。
勤続年数は1年未満を切り上げます。3月退職を4月退職に1日ずらすだけで控除額が40万〜70万円増えるケースもあるので、退職日は勤続年数の区切りを意識して決めるのが鉄則です。
退職金の税金の計算
退職一時金にかかる税金は、所得税と住民税の2つ。計算式は次の通りです。
- 課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2
- 所得税 = 課税退職所得 × 所得税率(5%〜45%)− 控除額
- 住民税 = 課税退職所得 × 10%
ポイントは「1/2にしてから税率をかける」こと。これにより、税率の高い人ほど大きな恩恵を受けられます。さらに退職金は分離課税のため、給与所得とは合算されず、その年の所得税率が跳ね上がる心配もありません。
【計算例】勤続30年で退職金2,500万円のケース:
- 退職所得控除 = 800万 + 70万 × 10 = 1,500万円
- 課税退職所得 =(2,500万 − 1,500万)× 1/2 = 500万円
- 所得税 ≈ 500万 × 20% − 42.75万 ≈ 57.25万円(復興特別所得税は別途)
- 住民税 = 500万 × 10% = 50万円
- 手取り ≈ 2,500万 − 約108万 = 約2,392万円
同じ2,500万円を給与で受け取れば税金は800万円超になるので、退職金の優遇度合いの大きさがわかります。
一時金 vs 年金受給
会社によっては退職金を「一時金」「年金(分割)」「両方の併用」から選べる場合があります。どちらが得かは状況によって変わります。
一時金で受け取るメリット
- 退職所得控除+1/2課税で税負担が最小
- 住宅ローン完済や老後資金の運用に自由に使える
- 受け取った後の運用益は自分の成果になる
年金で受け取るメリット
- 会社が一定利率(2〜3%程度)で運用してくれる
- 計画的に使えるため浪費を防げる
- 長生きしてもなくならない安心感
ただし年金で受け取る分は雑所得(公的年金等)扱いとなり、公的年金との合算で課税されます。公的年金等控除の枠(65歳以上で年金額に応じて110万円〜)を超える人は税負担が増えやすく、加えて社会保険料(国民健康保険料など)の算定対象になります。一般論としては、退職所得控除に収まる範囲は一時金で受け取り、超過分があれば年金で分散するのが賢い選択です。
確定申告は必要か
退職時に勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で納税が完結し、原則として確定申告は不要です。出さないと一律20.42%の源泉徴収となり、控除がまったく適用されないため、必ず提出しましょう。
ただし、以下のケースでは確定申告すると得になることがあります:
- 年の途中退職で給与の年末調整が未済 → 還付の可能性大
- 医療費控除・住宅ローン控除(初年度)など他の控除がある
- 同年に複数社から退職金を受け取った
- iDeCoを一時金として同年に受け取り、勤続年数の重複期間がある
特にiDeCoとの受け取りタイミングは要注意。同じ年に両方を一時金で受け取ると退職所得控除が共有され、節税効果が薄れることがあります。iDeCoは退職金受給の5年以上前に先取りするのが一つのテクニックとして知られています。
手取りを増やす実践テクニック
相場と税制を理解した上で、実践的に手取りを最大化するコツをまとめます。
- 退職日を勤続年数の区切りで設定:1日違いで控除額が増えることがある
- 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出:未提出は最大の損
- iDeCo一時金との受け取り時期をずらす:5年ルールに注意
- 住宅ローン残高があれば一括返済を検討:金利を考慮し有利なら実行
- 受け取った退職金を新NISAで分散運用:使い切らずに長持ちさせる
関連ツール
退職金の税金シミュレーター を使う →まとめ
退職金は退職所得控除+1/2課税+分離課税という三重の優遇によって、給与より圧倒的に税負担が軽い所得です。控除枠に収まれば実質ゼロ課税となり、超えても税率は半分相当に圧縮されます。「いつ・いくら・どう受け取るか」で手取りが大きく変わるため、退職の数年前から計画を立てておくことが重要です。
まずは自分の会社の退職金規程を確認し、想定額をシミュレーションしてみましょう。次に、iDeCoや小規模企業共済との受け取り時期を整理し、必要に応じてファイナンシャルプランナーに相談するのが安心です。長年の勤労の対価である退職金、できる限り多く手元に残せるよう備えておきましょう。